兵頭隼人
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兵頭隼人編 

 部屋の角を曲がった瞬間に、その男に呼び止められた。
「おい、何でここにいる」
 肩を捕まれて、仕方なく振り返る。そこにいたのは、今、一番会いたくない男。室戸の首領であり、現在は高耶の下にいて、彼に一番近い立場にいる男だった。
 高耶の部屋から出てきたばかりの直江を、わざわざ見張っていたようだ。
「もう用事は済んだ。通してもらおう」
 そう言って、肩に掛けられた兵頭の手を、直江はやや乱暴に振り払った。
「この前、言ったことを忘れたのか。隊長に近づくなと言ったはずだが」
 兵頭は、直江を睨み付けながら高圧的に告げた。
 先日、一方的に兵頭に通告されていたことを直江は思い出した。
「………従う理由はない。それに俺は彼に呼ばれたんだ。そこを通せ」
 行き手を阻むように回り込んでくる兵頭に、直江は冷たい声で告げた。
「言いたいことはそれだけか?」
 直江の強情な態度に呆れながら兵頭が聞いてくる。
「………副隊長殿はずいぶんとお暇らしいな。こんなところで、番犬をしているなら、他にやるべきことがあるだろう?」
 兵頭の態度に臆することなく、直江が挑戦的に告げる。
 その言葉に、兵頭が過剰に反応する。
「まだ、そんな発言ができるとは……本当に自分の立場をわかっていないようだな」
「俺に構ってないで、さっさと自分の任務に戻ったらどうだ?」
 直江は相手にしてられない、といったように兵頭に背を向けて、歩きだした。
「待て、まだ話は終わってないぞ、橘」
「俺は話すことなんて、ない」
 そんな直江を兵頭が追いかけながら、直江の腕を掴んだ。
「待てと言ってるだろう」
「離せっ。俺は急いでいる」
 そんな直江に耳を貸さず、兵頭は掴んだ直江の腕を、自分のほうへ引き寄せた。
「悪いが一緒に来てもらおうか。これも俺の任務の一つなんでね」
 直江はそんな兵頭を睨みつけながら言った。
「……嫌だと言ったら?」
「もちろん…従ってもらう他はない」
 兵頭の力は強く、しっかりと掴まれた状態では外すことはできない。兵頭は直江の腕を無理矢理引いて、すぐ傍の会議室に連れ込んだ。
 
 
 直江は部屋に乱暴に連れ込まれ、突き飛ばされて、床に転がった。
「痛っ……何をする!」
 そのまま、兵頭が上から被さってきた。体重を掛けて乱暴に直江を組み敷いた。
「先日のことを……忘れた訳ではあるまい。まだ覚えているだろう?」
「離せっ!いい加減にしろ、兵頭」
 直江がそう言って、兵頭を自分から引き離そうとしているが、兵頭の力には及ばなかった。
「隊長が認めても、俺は許さない。いいか、もう一度だけ言う。隊長に近づくな」
「そんなことっ………お前には関係ないことだ」
 不利な体勢のままで、直江が反論する。
 そんな直江の様子に、兵頭が薄く笑う。
「いいのか…そんな事を言って。やはり口でいくら言ってもお前は理解できないようだな」
 兵頭は、意志を変えそうにない直江の服を一枚ずつ剥ぎ取っていく。ひんやりとした手が、直江の素肌に触れる。
「やめっ……」
「お前がきちんと言うことを聞けば、すぐに開放してやるさ」
 そう言いながらも、兵頭の手は休まることはなく直江の肌をまさぐっている。
「誰が、お前の言うことなど……」
 苦しげに、直江がいう。
 いつのまにか、直江は抵抗する体力を奪われていた。さすがに腕力では兵頭に叶わず、直江は逃げ出すことを諦めていた。
「そうやって、強がっていられるのは、いつまでか楽しみだな。どれ……こっちのほうがいいか」
 兵頭は、直江の反応を確かめて、徐々に追いつめていく。
 次第に荒い息をつきながら、直江はそれでも兵頭の言うことをきこうとはしない。
「強情なやつだな」
 兵頭の与える刺激に、感じないようにこらえていたが、肉体は直江の意志に反して反応してしまう。
「時間はたっぷりある。反抗できないように、この体に覚えさせてやる……」
 
 
 直江にしっかりと自身の征服の証を刻み付け、兵頭が部屋から出ていったのは、それから数時間後のことであった。

 1999/6/27 作成
 
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